医師が不動産投資で法人を持つ。
少し話だけでも聞きかじった医師は、結構いるのではないでしょうか。
僕も医師でありながら、不動産投資で法人を持っています。
医師が不動産投資で法人を持つ事は、比較的簡便ではありますが、何も知らずに挑むのは危険です。
医師が不動産投資を始める場合も、全員が全員、法人を持てば良いとは限りません。
どのような医師は不動産投資で法人を持つ方が良いのか?持たない方が良いのか?
具体的に考えていきます。
こんな医師は、不動産投資で法人を持とう
医師が不動産投資で法人を持った方が良い場合は
- 規模が大きい
- 年収が高い
- 若い
の3つの場合です。
1、規模が大きい不動産投資では、法人を持とう
医師が不動産投資を行い、物件の数が増え規模が大きくなってきた場合、法人を持った方が良いでしょう。
理由は2つあります。
1つめ、費用負けしない。
法人を維持するのには、様々な費用がかかります。
具体的には
- 税理士費用…年間40万円
- 法人住民税均等割…年間7万円
などです。
仮に年間家賃が120万円、返済60万円、手残り60万円の不動産投資規模で、法人を設立しても、費用負けしてしまいます。
おそらく赤字です。
2つめ、税金。
医師が不動産投資を行う場合、銀行からの信用力が高いため、比較的大規模になりがちです。
なぜならば、大規模な物件の方が、購入できる人間が限られるため、旨味が大きいからです。
医師が大規模な不動産投資を個人で行なった場合、確実に税金が問題になります。
とある医師が、家賃年収1億円を超えたとしましょう。
もしこれを全て個人で所有している場合、所得税40%、住民税10%、ザックリ概算で50%の税率がかかります。
法人で所有している場合は、法人税の実効税率は約30%です。
税率が20%も違います。
2、年収が高い医師は、法人を持とう
年収が高い医師も、不動産投資を始めるなら法人を持つべきです。
税効果があるからです。
年収が高い医師が不動産投資を個人で始めると、家賃年収が個人年収と合算されて課税されるため、税率が高くなります。
年収1200万円の医師が、不動産を個人で所有し、家賃年収が1000万円あったとします。
合計年収は2200万円ですから、所得税は40%が適応されます。住民税と合わせると、税率は50%です。
実効税率が30%の法人で不動産投資をした方が、手元に残るお金が多いという事がわかると思います。
3、若い医師は、法人を持とう
これは個人的な感覚ですが、若い医師が不動産投資をする場合、法人を持った方が良いと思います。
老い先が長いからです。
例えば80代の医師が不動産投資を開始し、法人を持つとなると、その意味合いは疑問が残ります。
仮にその医師が亡くなったとして、法人が所有する不動産を相続させるとなると、話が煩雑です。
また若い医師ほど、法人という道具を手に入れてから歩む人生が長いわけで、知見が複利になって効いてきます。
法人という道具を、どう使うか。
法人があると、どう違うか。
実践で勉強しながら、その利益を享受する事ができます。
こんな医師は、不動産投資で法人を持つな
医師が不動産投資で法人を持たない方が良い場合は
- 規模が小さい
- 年収が低い
- 若くない
の3つの場合です。
上記の逆です。
規模が小さい場合、費用負けするので法人化はスルーしましょう。
ただし、今後も規模を拡大する予定の場合は、一時的に費用負けを飲み込んで法人化するのは、アリだと思います。
年収が低い医師も、法人化を無理にする必要がありません。
税金の問題が発生しにくいからです。
ただし不動産の規模が大きくなってきた場合は、医師の年収を無視して家賃年収が積み重なってしまうため、その場合は法人を持った方が良いでしょう。
若くない医師も、法人化は避けましょう。
所有する不動産が、路頭に迷ってしまいます。
医師が、不動産投資で法人を持つ盲点
医師が不動産投資で法人を持つべきかどうか。
この議論は、基本的には
手元に残るお金が多い方が良い
という前提の元に、話をしてきました。
ここに1つ、医師が不動産投資で法人を持つ事の盲点があります。
先ほどの、家賃年収1億円の例を考えてみましょう。
実際の税額の計算は、もっと煩雑ですが、ここでは簡単に概算とします。
家賃年収=1億円
個人所有の場合…税金=5000万円、手残り=5000万円
法人所有の場合…税金=3000万円、手残り=7000万円
手残り金額が多いから、法人所有が有利だ、という話でした。
こう書くとどうでしょう。
家賃年収=1億円
個人所有の場合…税金=5000万円、個人手残り=5000万円
法人所有の場合…税金=3000万円、法人手残り=7000万円
結局のところ、法人の方が手残り収入は多いものの、それは結局法人の口座にしか残らないわけです。
医師個人の手残りではない。
7000万円を、個人の手残りにするには、何かしらの方法で法人から個人に資金を吐き出すしかありません。
例えばなんのひねりも無しに、法人の7000万円を、1年で役員報酬として医師個人に吐き出したとします。
ここでは勘弁に、7000万円に対して所得税や住民税などで40%くらいが課税されたとすれば、追加で税金が取られます。
つまり
家賃年収=1億円
個人所有の場合…税金=5000万円、個人手残り=5000万円
法人所有の場合…税金=3000万円、法人手残り=7000万円
法人から個人へ…税金=3000万円+2800万円、個人手残り4200万円
となり、トータルの手残りは、法人ではなく最初から個人で持った方が、多くなります。
いかがでしょうか。
あくまで概算ですから、実際にはこうはなりませんが、イメージだけでも伝わるでしょうか。
もちろん、7000万円を法人から吐き出す方法は色々あります。
- 年1000万円の給与所得を7回に分ける
- 退職金として受け取る
などです。
1年あたりの給与所得を低くして、分割して受け取った方が税率は有利です。
退職金は税制上優遇されているので、退職金として受け取るのも良いでしょう。
これが、医師が不動産投資で法人を持つ事の盲点です。
使えるお金、コントロールできるお金を増やし、ヒトやモノを動かしたいのか。
それとも個人資産を増やし、子孫に渡したいのか。
目的によって、医師が不動産投資で法人を持つかどうかは、使い分けるべきです。
医師が不動産投資で法人を作る手順
医師が不動産投資を開始し、法人を作るには手順があります。
1、法人を登記
まず、不動産投資を始める前に法人を登記します。
なぜならば、「買いたい!」と思える良さげな不動産情報が手に入ってから、法人を登記して融資審査を受けて…
とのんびりやっていたら、絶対に買えないからです。
他の人に取られます。
本来買いたい不動産、魅力的な不動産ほど足が速いので、瞬時に購入できる道筋を立てておかなければ、購入まで至りません。
不動産投資を始める事が、できません。
不動産を買えるかどうかわからないのに、法人を登記するのには、ランニングコストや設立コストがムダになる可能性があります。
しかし、それくらいのリスクを背負わなければ前には進めません。
次に、法人を登記する場所について。
これは
どこの不動産に投資するか
で決めた方が良いと思います。
つまり
- 地方で不動産投資をするなら、地方
- 都心で不動産投資をするなら、都心
が良いでしょう。
なぜならば、お金を貸してくれる銀行が限られるからです。
医師が不動産投資を行うにあたって、融資先としての候補は
- メガバンク
- 地方銀行
- 信用金庫
の3つがあります。
ノンバンクや信用組合も無くは無いですが、金利が上記3つに比べて高いため、高属性の医師がわざわざ借りるまでもありません。
そして、時代によって変わりますが、いきなりメガバンクは無理です。
地銀か信金信組に融資をしてもらう事になります。
そうなると、不動産投資先に法人がある方が有利です。
なぜならば、信用金庫は法律によりエリアの縛りがあるからです。
信用金庫が法人に融資する際には
- 法人の代表者居住地
- 法人の登記場所
- 物件の場所
が、信用金庫のエリア内である必要があります。
地銀が貸してくれない場合も、信用金庫なら貸してくれる場合があるため、信用金庫の融資先となる条件をクリアしておくのが無難です。
まとめると
- 地方在住、地方の物件、地方に法人
- 都心在住、都心の物件、都心に法人
のどちらかが良いでしょう。
地方在住の場合、安い不動産でも買ってオフィスとして登記してしまうのもアリです。
実家があれば、実家がラクです。
都心在住の場合、オフィス登記用に不動産を買うには高過ぎます。
都心の場合は、レンタルオフィスが基本的な選択肢になるでしょう。
2、税理士を選定
医師は税務に関して、基本的には素人です。
医師が不動産投資で法人を作り経営していくならば、顧問税理士は必須です。
ただし、全くの丸投げも良く無いです。
経営者として、会社の数字は把握しておくべきですし、会計知識はやりながら少しずつ身についていくもの。
個人的には「クラウド会計ソフトで自分で把握しながら、細かい事は顧問税理士にお願いする」のが良いと思います。
僕はマネーフォワードを使っています。
基本的に無料で使えて、複式簿記にも対応しているので、オススメです。
次に、信頼できる税理士を探しましょう。
税理士と言っても、本当に数が多くピンキリなので、よーく吟味しましょう。
税理士ドットコムのような、一括検索システムを使うと手っ取り早いです。
僕が税理士を選ぶ際に重要視したのは
- 年齢が若い
- 返信が速い
- 不動産賃貸業の事業者が顧問先にいる
事です。
あまりにお爺ちゃんだと、新しい知識が入っていなかったり、メール対応してくれないので困ります。
医師としての勤務もあるので、日中の電話は困難です。基本的にはメールで、素早くやり取りする必要があります。
そしてやはり、不動産賃貸業を営んでいる顧問先を抱えている税理士さんの方が、知見もあり、心強いですよね。
若い。速い。知見あり。
この3つは割と外れない条件だと思いますね。